論文・レポートの書き方:基本的な構成

論文やレポートを書き始めるにあたって、まずその基本的な構成を知っておく必要があります。以前の記事で、レポートには「解答型レポート」(解答だけを求めるレポート)と「考察型レポート」(与えられたテーマについて自分で調べ、考察を行う必要があるレポート)の二種類があると書きましたが、この記事では(そしてこれ以降も)「レポート」と言えば「考察型レポート」を指すと考えてください。解答型のレポートでは単に「答え」を書けばいいだけだからです。

学術論文や考察型レポートの一般的な構成は次のようになります。

  1. タイトル
  2. 目次
  3. 要約
  4. 導入(背景)
  5. 目的
  6. 材料と方法(実験方法、調査方法など)
  7. 結果
  8. 考察
  9. 結論
  10. 謝辞
  11. 引用文献

それでは一つずつ順に解説していきます。

1. タイトル

論文やレポートを書くときに最初に考えるのがタイトル(テーマ)だと思います。最初に考える必要があるのは確かですが、確定させる必要はありません。論文を書き進めていくうちに、最初は気付かなかった研究のアピールポイントが見えてきたり、結論を軌道修正したりすることはよくあるので、それに応じてタイトルも修正したほうが良いからです。最初は深く考えず、「とりあえず」で決めてしまえばいいでしょう。

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2. 目次

長い論文やレポートを書くときは、目次を付けた方がいいでしょう。逆に短い場合は付ける必要はないかもしれませんが、学術論文ではフォーマットが規定されていることも多いので、目次を付けるかどうかはその規定に従うようにします。

3. 要約

論文やレポートの全体をコンパクトにまとめたものが要約です。「目次」と同じく、学術論文では要約のフォーマット(文字数や内容など)が規定されていることが多いので、その規定に従って書きます。全体をまとめる作業なので、通常は原稿全体を書き終えて、最後に「要約」を書きます。

4. 導入(背景)

書こうとしているテーマの背景について解説します。論文にしてもレポートにしても、ある課題や問題について調べたり議論したりすることを目的として書きます。しかし、読者がその課題や問題についてよく知らなければ、せっかく論文やレポートを書いてもその重要性を分かってもらえません。自分が注目しているテーマがなぜ重要なのかを読者に知ってもらうことが、この「導入」の役割です。

この記事では「導入」と次に登場する「目的」を分けて書きますが、「導入」と「目的」を合わせて「序論」とすることもあります。提出先の規定があれば、その規定に従うようにしましょう。

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5. 目的

文字通り、そのテーマについて論文やレポートを書く目的を説明するわけですが、厳密には「二種類の目的」に分けることができます。

一つ目は、そのテーマについて調べる必要性、あるいはそのテーマを調べることによって達成できる(可能性がある)目標や未来、という意味での「目的」です。いわば「大きな目的」です。

そしてもう一つは、その「大きな目的」を達成するために、今回の論文やレポートの中では何を行うのかという、いわば「小さな目的」です。

この「大きな目的」と「小さな目的」が明確に書けていると、読者が読みやすい、良い論文となります。どちらか一方でも欠けていると、読者は「この研究、何のためにやってるの?」「具体的に何をするの?」といった疑問を抱いてしまい、論点が定まらないまま先を読み進めることになります(あるいは読んでもらえないかもしれません)。

ちなみに英語では、「大きな目的」はaim、「小さな目的」はpurposeとして区別されます。日本語では両方とも「目的」と言ってしまうので、二つを区別できていない論文やレポートが多い気がします。

6. 材料と方法(実験方法、調査方法など)

自分が行った調査や実験の方法について記述します。例えば、調査を行った日時や場所、対象、実験手順、サンプルの分析方法、統計解析の方法などです。すでに実行したことなので、「〜した」「〜を行った」のように、基本的には過去形で記述します。論文やレポートの構成項目のなかでは一番書きやすい項目だと思うので、まずはこの「材料と方法」から書き始めるのがおすすめです。

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7. 結果

自分の調査や実験から得られた結果について記述します。理系であれば数値データが多いでしょう。データを整理・解析して作ったグラフや表なども「結果」に入れ、データの傾向や統計解析の結果などを説明していきます。「材料と方法」と同じく、過去のこと(すでに得られたデータ)について説明するので、基本的には過去形で記述します。

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8. 考察

得られた結果について、自分なりの解釈や考え方を説明していきます。論文やレポートの構成項目のなかでは、学生が最も苦手としている項目ではないでしょうか。考察の書き方は別の記事でご紹介したいと思いますが、とりあえずここでは、「結果」と「考察」の違いだけを明確にしておきましょう。

「結果」は「実験や調査をしたところ、こうなった」という事実を書くのに対し、「考察」では「結果がこうなった理由は、・・・だと思う」というような推察を書きます。「考察」の中では、自分の推察や主張を補強するために先行研究を引用しますが、「結果」の中で先行研究を引用することはほとんどありません。自分の研究結果を先行研究と比較している時点で、それは何らかの考察になるからです。

学生の論文を読んでいると、結果(事実)なのか、考察(推察)なのか分からないような書き方をしていることがよくありますが、両者の違いをはっきり理解した上で書くようにしましょう。

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9. 結論

「結果」や「考察」を終えて、最終的に主張したいことを書くのが「結論」になります。学生にありがちな例として、「結果」や「考察」をコンパクトにまとめているだけの「結論」がありますが、それは「結論」ではなく、「要約」に過ぎません。「結論」の導入として「結果」と「考察」を軽く要約するのは問題ありませんが、「結論」のメインとしては、さらにもう一歩踏み込んだ主張をするようにしましょう。

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10. 謝辞

お世話になった人たちへ感謝の言葉をつづります。特に決まった書き方はありませんが、もし何かの研究費を使って行われた研究であれば、その研究課題(科研費番号など)にも言及します。大学の課題レポートであれば、謝辞まで書くことは少ないでしょう。

11. 参考文献

論文やレポートの最後には、その文書を作成するにあたって参考にした文献のリストを挙げます。引用方法には、大きく分けてハーバード方式とバンクーバー方式があります。提出先から指定された方式があれば、それに従うようにしましょう。

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まとめ

以上が論文やレポートを構成する主な項目になります。必ずしも頭から書いていく必要はなく、自分の書きやすいところから書き始めればいいと思いますが、記事の中でも触れたように、「方法」や「結果」は書きやすい項目です。「序論」に悩んだときは、まず「方法」や「結果」を整理してみると良いでしょう。

次回からは、それぞれの項目について具体的に書き方のポイントを解説していきたいと思います。

この記事を書いた人

田中泰章 博士

Yasuaki Tanaka Ph.D.

プロフィール
環境問題や教育制度などについて広い視点から考える自然科学者。2008年に東京大学大学院で博士号(環境学)を取得した後、東京大学、琉球大学、米国オハイオ州立大学、ブルネイ大学など、国内外の大学で研究と教育に約15年間携わってきました。これまでに30報以上の学術論文を筆頭著者として執筆し、国際的な科学雑誌の査読者として多数の論文審査も行っています。

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