論文・レポートの書き方:タイトル(主題・副題)

論文やレポートのタイトルは、「文書の最初に書かれているから、原稿を書き始めるときに決めるもの」と思っていませんか?原稿を書き始めるときにタイトルを決めても良いのですが、原稿を書いているうちに主張や論点を修正しなければならなくなることはよくあります。最初に決めたタイトルに固執するのではなく、原稿を書き上げた後に最もふさわしいタイトルを決めることが大切です。

今回の記事は、論文やレポートのタイトルをどうやって決めるか、というテーマです。

キーワードからタイトルを決める

これが最もシンプルで直感的なタイトルの決め方です。

まずは、その論文・レポートの中で最も重要な語句(キーワード)を3つから5つくらい選んでみましょう。原稿を一通り書き上げた後なら、どの語句が頻繁に登場するか、すぐにイメージできるはずです。その語句こそが、タイトルに入れるべきキーワードになります。語句の使用回数を正確にカウントする必要はなく、何となくのイメージで構いません。

そしてキーワードを選ぶことができたら、そのキーワードを使ってタイトルを考えていきます。選んだキーワードをすべて使う必要はありませんし、逆に足りない語句を足す必要があるかもしれません。自分の原稿を最も簡潔かつ魅力的に表せるタイトルにします。

目的からタイトルを決める

キーワードが選べない、あるいは選んだけどタイトルが作れないという人は、次の3点について考えてみると良いでしょう。

(1)論文・レポートの中で取り組んだ問題
(2)問題解決のために着眼した点
(3)研究対象


参考文献『これからレポート・卒論を書く若者のために』酒井、2017年、共立出版

「研究対象」とは、たとえば生物学なら研究を行った生物種、天文学なら観測した天体、心理学なら被験者のことです。

場合によっては着眼点や研究対象を入れる必要はないことも文献中で説明されていますが、上記の3点をまとめることで、タイトルに入れるべき情報を整理できるでしょう。この情報は論文やレポートの「目的」に相当するものなので、要するに「目的」を短くしてタイトルにするということです。

主題と副題に分ける

多くの内容をタイトルに詰め込もうとすると、長くて読みにくいタイトルになってしまいがちです。そんなときは、主題と副題の2つに分けてみるとすっきりして引き締まったタイトルになるでしょう。

主題と副題の6パターンについて文献から引用します。

(1)問いと観点

日本社会でグローバル化が進んでいるか
ー人と物という観点からー

(2)問いと答え

日本社会でグローバル化が進んでいるか
ー人と物の大幅な増加ー

(3)問いと具体的答え

はたして日本社会はグローバル化しているのか
ー労働者・留学生の増加、食材・器具の普及ー

(4)テーマと探求方法

日本社会におけるグローバル化の進行
ー人の移動規模と物の流入数を調査するー

(5)テーマと、資料・具体的な範囲

日本社会におけるグローバル化の進行
ー政府統計資料から見る2000年以降の動向ー

(6)キャッチーな表現と学術的な表現

18万人の留学生やタジン鍋
ー日本社会ではグローバル化が進行しているかー

『レポート・論文をさらによくする「書き直し」ガイド−大学生・大学院生のための自己点検法29』佐渡島ほか、2015年、大修館書店

このうち(2)と(3)は、問いに対する答えを短く書くか具体的に書くかの違いなので、ほとんど同じです。

主題と副題をどのように設定するのかは、論文やレポートの内容(特に目的)と大きく関係しています。例えば、日本社会のグローバル化について論じた研究はすでにあるけれども、人と物という観点から論じた研究がなく、自分の論文が初めての研究であるなら、(1)の「問いと観点」がふさわしいタイトルになるでしょう。「人と物という観点」を強調できるからです。

では、(4)の「テーマと探求方法」の主題・副題を付けるのはどういう場合でしょうか?これは、その研究方法を売りにしたい場合です。「日本社会のグローバル化の進行について調べた研究はすでにあるけれども、人の移動規模と物の流入数を実際に調べた研究は今までにない」という場合、(4)のように研究方法を副題に入れて強調します。

つまり、(1)〜(6)のどのパターンを選ぶのかは、その論文・レポートが最も売りにしていること(研究の新規性や特異性など、他の論文にはない特長)によって変わってきます。

まとめ

以上、論文やレポートのタイトルの付け方についてまとめてみました。どの方法も基本的な考え方は同じで、重要なキーワードやその論文の売り(アピールポイント)を探し出し、それらを並べ替えながら短く表現する、という作業になります。

今日の記事の最初に、「原稿を書き上げた後に最もふさわしいタイトルを決める」と書いたのは、原稿を実際に書いていくなかで、その研究の売りが徐々に見えてくるということがよくあるからです。 自分の論文・レポートの売りは何なのか、それが見えてくればタイトルは自ずと決まってくるでしょう。

この記事を書いた人

田中泰章 博士

Yasuaki Tanaka Ph.D.

プロフィール
環境問題や教育制度などについて広い視点から考える自然科学者。2008年に東京大学大学院で博士号(環境学)を取得した後、東京大学、琉球大学、米国オハイオ州立大学、ブルネイ大学など、国内外の大学で研究と教育に約15年間携わってきました。これまでに30報以上の学術論文を筆頭著者として執筆し、国際的な科学雑誌の査読者として多数の論文審査も行っています。

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