学生のための論文・レポートの書き方:研究テーマの見つけ方

前回の記事では、レポートや論文には、「解答型のレポート」「考察型のレポート」「学術論文」の三種類があることを紹介しました。

今回の記事では、論文やレポートのテーマ決めについて書いていきますが、「解答型のレポート」では自分でテーマを決める必要がないので、テーマの自由度が高い「考察型のレポート」や「卒業論文」「修士論文」「博士論文」などを対象としています。また、大学院入試などで研究計画書を書かないといけない場合にも当てはめることができるでしょう。

研究テーマの見つけ方

学生が研究論文やレポートを書く際に、最初に悩む問題が「何のテーマにするか」「どうやってテーマを見つけるか」ということです。教員からテーマが詳細に与えられている場合は悩む必要がないのですが、ある程度テーマに自由度がある場合は、自分が何について調べて書きたいのか、最初に決めなければならないからです。

テーマについて悩んでいる学生でも、「全く何も思い浮かばない」という学生はほとんどいなくて、「なんとなくこんなテーマ」というおぼろげなイメージは持っている学生がほとんどです。ただ、そこから「具体的にこういうテーマ」と決めていく過程で足踏みしてしまう学生が多いような気がします。おそらく、大学の講義では「テーマの見つけ方」は教えてくれないことが多いのでしょう。

それでは、「なんとなくこんなテーマ」から「具体的にこういうテーマ」に最短ルートでたどり着くための4つのステップを解説したいと思います。

1. インターネットで興味のあることを見つける

まずはインターネットを使って、自分が興味のあるテーマをあれこれ探っていきましょう。ニュースや新聞、ブログなど、インターネット上には様々な情報があふれています。図書館や本屋に行くこともできますが、最初の段階としては、幅広く情報を集めるられるインターネットが最適かもしれません。ただし、本屋には最近のトレンドを反映した本が並んでいるので、そういう話題に興味がある場合は本屋に行ってみることもおすすめです。興味がないテーマについて書くのは意欲も起こりませんし、苦痛の時間を過ごすだけになってしまいます。「論文」や「レポート」のテーマとして認められる自由度の範囲内で、まずは自分が興味のあることを見つけてみましょう。

2. 同じ分野の学術論文や書籍にたくさん目を通す

自分が興味のあることが見つかったら、そのテーマに関連するキーワードを考えます。最も重要なキーワードから順に、35個くらいのキーワードを書き出してみましょう。「たった3個から5個?」と思われるかもしれませんが、本当に重要なキーワードの数というのはそれほど多くありません。自分が何に興味があるのかということをしっかり考えながら、キーワードを書いてみましょう。

キーワードが書けたら、次はそのキーワードを使って学術論文や書籍を検索していきます。学術論文の検索サイトとしては、J-STAGEGoogle Scholarなどが便利でしょう。書籍を探すのであれば、大学の図書館や住んでいる自治体の県立図書館などに行くのが良いと思います。

用意したキーワードで論文や書籍を検索すると、おそらくたくさんの文献が表示されると思います。「こんなの全部読めない!」と思われるかもしれませんが、すべてに目を通す必要はありません。大部分は「タイトル」だけ見て飛ばし、興味がありそうな「タイトル」だけをクリックし、論文を開いたり、図書を実際に手に取ったりすれば良いのです。論文や図書を開いたとしても、パパッと見て、自分が思った内容と違ったり、書いてある内容が難しくて合わなかったりしたら、すぐに閉じて次に行きましょう。そうやって、なるべくたくさんの文献や資料に目を通していくことが、この段階では大切です。

ほとんどの日本人にとっては、英語よりも日本語の文章のほうが内容を把握するスピードが速いので、まずは日本語で検索することをおすすめします。分野にもよりますが、たとえば科学系だと、日本語より英語のほうがたくさんの文献が出てくるので、日本語の文献に慣れてきたら英語でも検索してみると良いでしょう。

3. 興味が引かれた「少数精鋭」論文を読み込む

たくさんの文献や資料に目を通していくうちに、「この内容、分かりやすいし、おもしろい」と思える文献に出会うはずです。そういう文献をいくつかピックアップし、それらを丁寧に読み込んでいきます。研究の背景や目的、調査方法、結果、考察など、隅から隅までじっくり読んでいきます。多くの文献を読もうとするのではなく、少数精鋭の、自分が本当に興味のある文献だけを精読していくということです。

一つ気を付けたいのは、文献の出版年です。分野によっては知見の更新が頻繁に行われていて、最近の動向が重要視されます。そういう分野の場合は、最初は古い文献に注目してもいいのですが、最終的には最近の文献の中から自分に合った文献を見つけるようにしましょう。文献の出版年は、検索を行うときに簡単に設定できます。

4. 「まだ分かっていないこと」を見つける

いくつかの重要な文献だけを精読していくと、自分が興味のあるテーマに関してこれまでどういう研究が行われてきたのか、現在までに何が分かっていて何が分かっていないのか、どのようにして調査や研究が進められているのかなど、その分野の最前線が分かるようになります。

なかでも最も注目するのは、「まだ分かっていないこと」です。最前線の研究でもまだ解明されていない問題を見つけたり、誰も調べたことのない疑問に気付くことによって、それを自分の論文やレポートのテーマにできる可能性が高いからです。特に学術論文では研究テーマの新規性が求められるため、「まだ分かっていない」とか、「まだ誰もやったことがない」というのが重要な評価ポイントになります。

5. 自分だけのテーマにアレンジする

自分が興味のある分野の最前線を知り、まだ誰も調べていないテーマが何となくでも分かれば、あとは先行研究に少しだけアレンジを加えて自分だけの研究テーマを作ります。例えば、研究対象を変えたり、実験方法を変えたり、従来とは逆の仮説を大胆に立ててみたり、アレンジ(新規性)の加え方は無限にあると言ってもいいでしょう。

ただし、「なぜそのアレンジを加えるのか」ということは明確にしておかなければなりません。その理由こそが、あなたが書く論文・レポートの「意義」や「目的」となるからです。どういうアレンジを加えればおもしろいのか、どういう新規性がその分野では必要とされているのか、などについて考えてみると、自ずとアレンジの加え方が見えてくると思います。

以上が、今回のテーマ「研究テーマの見つけ方」でした。卒論のテーマ決めは多くの学生が悩むところなので、今回の記事が少しでも参考になればと思います。次回は、研究の背景(序論)の書き方についてまとめてみます。

この記事を書いた人

田中泰章 博士

Yasuaki Tanaka Ph.D.

プロフィール
環境問題や教育制度などについて広い視点から考える自然科学者。2008年に東京大学大学院で博士号(環境学)を取得した後、東京大学、琉球大学、米国オハイオ州立大学、ブルネイ大学など、国内外の大学で研究と教育に約15年間携わってきました。これまでに30報以上の学術論文を筆頭著者として執筆し、国際的な科学雑誌の査読者として多数の論文審査も行っています。