大学院受験生必見!教員が教える研究計画書の書き方

大学院の入学試験では、研究計画書の提出を課されることが多くあります。大学院というのは、基本的に自分が興味のある研究を行う場所なので、どういう研究をしようと思っているのか入試のときに説明する必要があるわけです。多くの受験生にとって研究計画書を作成するのは初めてのことなので、他の入試内容(英語や面接など)に比べて難しく感じるのは間違いないでしょう。

今回の記事では、大学院入試で求められる研究計画書の基本的な書き方について解説したいと思います。

研究計画書の構成

一般的な研究計画書では、主に次のような項目について説明する必要があります。

  • 研究テーマ(タイトル)
  • 研究の背景(その研究を行いたい理由)
  • 研究の目的
  • 研究の方法

大学院入試では、研究計画書全体としての文字数に制限が課される場合が多いですが、各項目(背景・目的・方法)について課されることはほとんどありません。そのため、どの項目をどれくらい書いたらいいのか迷う受験生が多いようです。

特に指示がなければ、研究背景40%〜50%、研究目的10%、研究方法40%〜50%くらいを目安に書くと良いでしょう。例えば、計画書全体で「2000文字程度」という指示があれば、研究背景は800〜1000字、目的は200字程度、研究方法は800〜1000字という割合です。

通常、受験生にとっては研究背景が一番書きやすく、研究方法は一番書きにくい項目です。研究背景や目的は、ネットの情報や自分の想像で何となく書けてしまいますが、研究方法を具体的に書くとなると、ある程度の専門知識が必要になるからです。そのため、上記の割合を意識せずに書くと、研究の背景と目的が計画書の大部分を占めてしまい、研究方法はほんの少しだけ、というような構成になってしまいがちです。

しかしながら、大学院の入試で研究計画書を課す一番の目的は、その受験生がどれくらい具体的に自分の研究計画を立てているのか評価することです。そのため、肝心の研究方法が少ししか書かれていないと、審査員の評価は大きく下がってしまいます。そうかといって、受験生にとって研究方法を具体的にたくさん書くというのは容易なことではないので、上記のように「背景と目的を約半分、残りの半分で研究方法」という割合をおすすめしています。

それでは具体的に各項目の書き方を説明していきます。

研究背景と目的

研究の背景と目的は、常にセットで考えるようにします。これまでの研究で明らかになっていないことや社会情勢など、何らかの問題が研究背景としてあり、それを解決するのが研究目的だからです。

研究背景と目的は、主に次のような順番で構成すると良いでしょう。

  1. 研究テーマに関する基本的な情報を書く(導入)。
  2. 問題を提起する。
  3. 問題を解決することの重要性(研究の意義)を訴える。
  4. 問題を解決するために必要なこと(研究目的)を述べる。
  5. 仮説(目的を遂行したときに得られそうな結果)を立てる。

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通常の入試の研究計画書では文字数が限られていますし、仮説を立てるには先行研究を入念に調査する必要があるので、❺(仮説)は省略しても構わないでしょう。

研究の背景と目的を書くにあたって意識しなければならないのは、関連する先行研究です。書き始める前に、まずは先行研究の中から自分の興味があって、かつ自分でもできそうなものをいくつか見つけ(3つくらいでOK)、その論文をじっくり読み込みます。そして、その先行研究を自分なりに少しアレンジして、オリジナルの研究計画を作っていきます。

先行研究をアレンジする方法については、こちらの記事をご覧ください。

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研究方法

研究の背景と目的が書けたら、次はその目的を達成するための具体的な方法を説明していきます。研究をするのは未来のことなので、受験生にとっては一番書きにくい部分ですが、ヒントは先ほど触れた「先行研究」にあります。

「自分の興味があって、かつ自分でもできそうな」先行研究なので、その研究方法を参考にすれば良いのです。真似をする、と言ってもいいかもしれません。「真似していいの?」と思われる方もいるかもしれませんが、大学や研究機関で行われているほとんどすべての研究は、先行研究を参考にしながら行われています。何もない、ゼロの状態から、自分独自のアイデアを思い付いて研究しているわけではありません。「研究は独創性が大切」と言われますが、独創的な研究というのも、実際には先行研究の知見を参考にしながら、そこにアレンジを加えているに過ぎないのです。

そもそも、実験室で行われるような実験系の研究を除いて、先行研究を真似しようと思っても100%真似することはできません。研究対象になる人や地域が違ったり、調査を行う時期が違ったりするからです。先行研究と同じような調査方法を書こうと思っても、きっと100%同じにはならないはずです。その同じにはならない部分こそ、あなたの研究の独創的なポイントと考えれば良いのです。

実験室内で行われるような研究(たとえば化学反応や物理現象の実験など)では、先行研究と100%同じ研究方法を書くことができてしまうので、注意が必要です。全く同じ研究では単なる真似とみなされてしまうため、この場合は意図的に先行研究をアレンジすることが必要になります。

先行研究をアレンジする方法については、こちらの記事をご覧ください。

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先行研究の「方法」欄を読んでみて、「何が書いてあるのか分からない」と思うのであれば、それは自分の基礎知識がその論文を理解するレベルに達していないということなので、十分に理解できるようになるまで勉強するか、もしくはその先行研究を参考にして計画書を書くのは止めたほうが良いでしょう。

まとめ

以上が研究計画書の基本的な作成方法です。繰り返しになりますが、大切なのはたくさんの先行研究に目を通し、その中から「自分の興味があって、かつ自分もできそうな研究」を見つけることです。そのような論文さえ見つけられれば、研究計画を具体的に書き進めることができ、入試の審査員から高い評価を得られる可能性が大きく上がるでしょう。

この記事を書いた人

田中泰章 博士

Yasuaki Tanaka Ph.D.

プロフィール
環境問題や教育制度などについて広い視点から考える自然科学者。2008年に東京大学大学院で博士号(環境学)を取得した後、東京大学、琉球大学、米国オハイオ州立大学、ブルネイ大学など、国内外の大学で研究と教育に約15年間携わってきました。これまでに30報以上の学術論文を筆頭著者として執筆し、国際的な科学雑誌の査読者として多数の論文審査も行っています。

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