学生のための論文・レポートの書き方:解答型?考察型?種類を見分ける
論文やレポートの種類
「論文」や「レポート」などの課題を出されたときに、学生が最初に考えなければならないのは、その課題ではどういうタイプの作文が求められているのかということです。「論文」も「レポート」も似たような響きの言葉ですが、大学では一般的に、授業や実習で課される短めの作文が「レポート」、卒業論文や修士論文のような長い作文が「論文」、と使い分けられているようです。
論文やレポートの種類をまとめると、次のようになります。
解答型のレポート
授業や実習の後に課題として出されることが多く、数学の問題に解答したり、実験の結果をまとめたりするタイプのレポート。数学の問題であれば「正解」を、実験結果の整理であれば報告書としての「正しい形式(実験方法や結果の記載方法など)」を求められている。
考察型のレポート
授業内容を発展させるために課され、あるテーマについて論じるタイプのレポート。学術論文ほど長くはないが、目的や自分の仮説、考察などを書かなければならない。
学術論文
学部生の卒業論文や、大学院生の修士論文・博士論文などがこれに該当する。一般的なレポートよりも長く、研究の背景、目的、方法、結果、考察などを書く必要がある。自分で実験や調査を行って、独自のデータを入れる論文(いわゆる原著論文)と、既存の文献をまとめる論文(いわゆる総説論文)がある。
「解答型のレポート」は、「正解」や「形式(フォーマット)」があるので、学生にとっては比較的書きやすいようです。一方で、「考察型のレポート」や「学術論文」は難しく感じる学生も多く、その理由は主に次のようなものです。
- 何を書いたらいいのか分からない(テーマを決められない)
- 目的や仮説が立てられない
- 考察の書き方が分からない
- 参考文献の記載方法が分からない
特に「考察」では、自分の研究結果と他者の文献を照らし合わせながら、自分の考えを論理的に説明していく必要があるので、多くの学生が苦手としているようです。
そのような難しい部分をどうやって書いていくのかについては、今後の記事で解説していきたいと思いますが、その前になぜ論文やレポートを書くのかということについてまとめておきたいと思います。
なぜ論文やレポートを書くのか?
大学の課題として、なぜ論文やレポートが課されるのか考えてみたことはあるでしょうか?課されるたびに困っている学生も多いと思いますが、論文やレポートを作成するのには次のような目的があります。
- 問題を見つける能力を養う
私たちが生活する社会や環境にはたくさんの問題・課題がありますが、それに気が付かないと、「問題」と認識することさえありません。あるいは、自然界にはたくさんの不思議な現象がありますが、「どうして?」という疑問を持つことによって、その現象を解明しようします。身の回りの様々な事柄に意識的に目を向け、まずは「問題を認識する」あるいは「疑問を持つ」ことが、論文やレポートを書く原動力になります。
- 問題について調べ、自分なりの答えを見つける能力を養う
問題や疑問が出てきたら、それについて詳しく調べ、自分なりの答えや考えを見つけ出します。数学の問題のように明確な正解があるわけではなくても、先人たちの研究や自分のデータを見ながら、自分なりの考えに到達することによって、自分の知識や思考を深めることになるのです。この「問題解決能力」は、学校を卒業して社会に出た後も、常に求められる大切な能力です。
- 調べたことを書き記し、周りの人たちに文章で伝える能力を養う
自分の知識や考え方を文章として周囲の人々に伝える技術は、歴史や文化の継承、科学の進歩、健全な社会の構築など、さまざまな面で重要になってきます。論文やレポートの課題では、研究の背景から目的、結果や考察など、自分自身が組み立てた一連のストーリーを書き上げるため、自分の考えを人々に「正確に伝える能力」を養うことができます。
論文やレポートの種類と、それを書く大切さについてまとめてみました。次回からは、論文やレポートの書き方について具体的に解説していきたいと思います。
この記事を書いた人
田中泰章 博士
Yasuaki Tanaka Ph.D.
プロフィール
環境問題や教育制度などについて広い視点から考える自然科学者。2008年に東京大学大学院で博士号(環境学)を取得した後、東京大学、琉球大学、米国オハイオ州立大学、ブルネイ大学など、国内外の大学で研究と教育に約15年間携わってきました。これまでに30報以上の学術論文を筆頭著者として執筆し、国際的な科学雑誌の査読者として多数の論文審査も行っています。
アカデミックラウンジでは、
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