入試の小論文対策:「書き方」よりも重要なこと
以前の記事で、小論文の過去問を公開している大学のリストをまとめました。
公開直後から多くの方にアクセスしていただき、小論文の書き方についても記事にしてほしいという声がありましたので、今回はその辺りについて解説したいと思います。
小論文の書き方については多くの書籍やホームページで見つけることができますが、文字通り「書き方」についての解説がほとんどです。しかし、「書き方」を勉強するのは実は小論文対策の最終段階であって、その前の段階として(実際には同時並行して)準備しなければならないことがいくつかあります。それらを含めて、今回の記事では
- 基礎知識
- 読解力
- 言語化する力
- 構成力
という4つの要素が大切であることを解説します。
1. 基礎知識
大学や大学院入試の小論文試験では、たいていの場合、テーマが与えられて、それについての自分の考えを書くように求められます。あるいは、「〜について説明せよ」のように、専門用語や特定の語句について周知の(教科書に書いてあるような)事実を書くように求められることもあります。
ここで大切なのは、いずれの場合もその分野の基礎知識がなければ書けないということです。自分の考えを述べるにせよ、専門用語の定義について説明するにせよ、その分野のことをある程度知っているから書けるのです。
つまり小論文対策の最初のステップは、受験しようとしている学問分野の基礎知識をなるべくたくさん身に付けることです。小論文の出題分野は広いので、本やネットの記事など色々な文章に目を通して、幅広い知識を身に付けるようにしましょう。
2. 読解力
基礎知識を得るのと同時に、文章を正確に理解する力(読解力)を上げることも大切です。「小論文は書くだけなのに、読解力?」と思われるかもしれませんが、入試の問題文や解答すべきことを正しく理解するためには、読解力は必須です。読解力が足りないと、問題文を正確に理解できず、論点のずれた解答になってしまいがちだからです。
読解力を身に付けるためには、厳選した文章をゆっくり、深く読み込むことが大切です。その文章の論点は何か、筆者は何が言いたいのか、どのように文脈が構成されているのか、使われている専門用語の定義を説明できるか、などのポイントに注意します。
読解力が付いてくると、文章を読むスピードが自ずと速くなっていきます。
3. 言語化する力(語彙力、文法力)
基礎知識と読解力が身に付くと、小論文の問題を読んだときに、何を書かなければいけないのか、そして自分が何を書きたいのかが分かるようになります。そこで、何をどうやって書くのか考えていくわけですが、「書く力」にも二種類あって、一つは「言語化する力」、もう一つは「構成する力」です。そして最初に身に付けなければいけないのは、「言語化する力」です。
ここで「言語化」とは何かというと、頭の中にあることを正確に単語や文章にすることです。その際に、どれだけたくさんの語彙を持っているか(語彙力)、そして文法的に正しく、読みやすい文を書けるか(文法力)が重要になります。
たった一つの文を書くにしても、語彙力や文法力がないと、頭の中の考えを正確に文字にすることはできません。もちろん、小論文の試験で高い点数を取ることも難しいでしょう。そのため、まずは一文か二文でいいので、頭の中の考えを言語化する練習をします。練習方法としては、「200字以内で説明せよ」のような短めの小論文問題を解いてみるのがおすすめです。
4. 構成力
200字くらいの短い文章を書くのに慣れてきたら、次第に長い文章を書く練習をしていきます。この段階で必要になってくるのは、複数の文をどういう順に並べて、小論文全体をどういうふうに構成するか、という構成力です。「小論文の書き方」のような解説本は、この段階でようやく参考になります。
小論文の構成方法についてはいろいろな本で提唱されていますが、特定の正解パターンはないと思ったほうが良いでしょう。小論文の問題形式は多様化していますし、制限文字数も問題によってまちまちなので、特定の解答パターンを暗記するのではなく、まずは問題文を正確に理解しようとすることが大切です。
小論文の重要な構成要素を強いて挙げるとすれば、「意見」「理由」「具体例」になります。論文の結論とも言える自分の考え(意見)を述べ、その理由を説明し、さらにその根拠となっている具体例を挙げる、というような流れです。文字数によって、理由や具体例の数を調整します。
それからキーワードの流れも重要なチェックポイントなので、こちらの記事も参考にしてみてください。
まとめ
今回の記事では、大学・大学院入試の小論文を書くのに大切な4つの要素についてまとめました。
- 基礎知識
- 読解力
- 言語化する力
- 構成力
小論文対策をしようと思っている受験生は、やみくもに練習問題を解くのではなく、1〜4のうち自分に一番足りないのはどの部分なのかということを考えてみましょう。もしそれが1や2である場合は、練習問題を解く前にたくさんの本や記事を読んで、まずは基礎知識と読解力を身に付けることが大切です。
この記事を書いた人
田中泰章 博士
Yasuaki Tanaka Ph.D.
プロフィール
環境問題や教育制度などについて広い視点から考える自然科学者。2008年に東京大学大学院で博士号(環境学)を取得した後、東京大学、琉球大学、米国オハイオ州立大学、ブルネイ大学など、国内外の大学で研究と教育に約15年間携わってきました。これまでに30報以上の学術論文を筆頭著者として執筆し、国際的な科学雑誌の査読者として多数の論文審査も行っています。
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