アンケート調査結果の多変量解析:最初に考えるのは目的変数

前回の記事では、2つの質問に注目した解析方法についてまとめました。

アンケート調査結果の統計解析:2つの質問に注目する

今回の記事では、2つの質問の回答に注目して、その関連性を統計学的に調べる方法についてまとめます。質問の回答データが、名義尺度・順序尺度・数量データ(間隔尺度・比…

今回は、複数の質問に同時に注目する解析方法、いわゆる多変量解析についてまとめます。

複数の質問結果を同時に解析するときに、最初に考えなければいけないのは、何を調べるために解析するのかということです。多変量解析は大きく分けて二種類あって、目的変数があるかないかで分けることができます。

目的変数がある場合

目的変数がある場合というのは、複数の質問のなかの一つが重要視している質問で、残りの質問からその重要視している質問の回答を予測したり説明したりする場合です。この重要視している質問の回答が目的変数、残りの質問に対する回答が説明変数と呼ばれます。

たとえば、性別・年齢・職種・年収をたずねるアンケート調査があったとしましょう。調査の目的は、性別・年齢・職種のうち、どの属性が年収に最も影響を与えているか調べることです。この場合、年収が最も重要視している質問(目的変数)で、それ以外の性別・年齢・職種は、年収を説明できるかもしれないと仮説を立てている質問(説明変数)です。

アンケート調査では回答者の属性(性別や年齢など)をたずねることがよくありますが、これは属性の情報を説明変数として使用するためです。「この説明変数(属性情報)があれば、目的変数(重要視している質問の回答結果)をうまく説明できそうだ」という予測・仮説のもとに、属性に関する質問を作ります。

目的変数がある場合の多変量解析は次のようなものです。

目的変数があるとき

重回帰分析、ロジスティック回帰分析、判別分析、決定木分析

目的変数がない場合

一方、目的変数がない場合というのは、アンケートの回答者を分類したり、回答結果を要約したりする場合です。

たとえば、ある商品を買ってくれた顧客に対してアンケート調査を行い、デザイン・機能性・耐久性・価格について満足度をたずねたとしましょう。調査の目的は、各項目の満足度から顧客をグループ分けして、客層の特徴を把握することです。この場合、どれか一つの質問が重要視されているわけではなく、すべての質問が同じくらい重要になります。

このように目的変数がない場合の多変量解析には、次のようなものがあります。

目的変数がないとき

主成分分析、因子分析、クラスター分析、対応分析

まとめ

今回の記事では、アンケート調査の結果を解析するときによく用いられる多変量解析を、目的変数の有無で分類しました。自分が何を明らかにしたいのかよく考えて、まずは目的変数の有無について考えてみましょう。今回紹介した解析方法については、別の記事で詳しく解説していきます。

この記事を書いた人

田中泰章 博士

Yasuaki Tanaka Ph.D.

プロフィール
環境問題や教育制度などについて広い視点から考える自然科学者。2008年に東京大学大学院で博士号(環境学)を取得した後、東京大学、琉球大学、米国オハイオ州立大学、ブルネイ大学など、国内外の大学で研究と教育に約15年間携わってきました。これまでに30報以上の学術論文を筆頭著者として執筆し、国際的な科学雑誌の査読者として多数の論文審査も行っています。

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