論文の査読ポイントを研究者が分かりやすく解説:②論理性
前回から3回にわたって、論文の主な査読ポイントについて解説しています。査読する側にとっても査読される側(論文の著者)にとっても参考になると思いますし、特にこれから論文を執筆・投稿しようと考えている方は、掲載の可否に関わる重要なことですので参考にしてみてください。
記事としては、査読者側ではなく、著者側の立場から書いていきます。今回は研究の「論理性」に関する主な査読ポイントを3つにまとめてみました。
データの解釈は妥当か
データの解釈は、論理性の問題として一番目に付きやすいポイントです。データを拡大解釈していたり、統計解析の結果を誤って解釈していたりすると、査読者から指摘される可能性が高くなります。
データの解釈でよく見られる間違いは、例えば相関と因果関係を混同しているケースです。実際には2つの変量の関係を調べて相関を示しただけなのに、あたかも両者の因果関係を証明したかのように記述しているケース(例えば、「(説明変数)が(目的変数)に影響を与えていることが分かった」のような記述)は非常に多く見られます。
相関と因果関係ほどではありませんが、もう一つのよく見られる誤りは、2つの変量の関係を調べて、強い相関が見られた(相関係数が大きい)から2つの変量には関連があるとする記述です。強い相関があるからといって2つの変量に必ずしも関連があるわけではなく、関連が全くない場合もあります。これは図を描けばすぐに分かることなのですが、図を描かずに相関係数だけを見ていると勘違いしてしまうのかもしれません。
論理の展開は妥当か
データを解釈したら、次はそのような結果が生じた理由やプロセスなどを論じていくわけですが、そのときに査読者にチェックされるのは論理展開の妥当性です。
例えば、「Aという結果が生じた理由はBと考えられる」というような文脈があったときに、本当にBという可能性しかないのかどうかということです。査読者が「CやDといった別の可能性もあるのではないか」と思えば、「理由はB」という著者の論理展開に違和感や強引さを感じることになります。著者としては最終的な結論をBの方向に持っていきたいとしても、論文としてはCやDの可能性についても論じ、それらの可能性が低いことを示した上でBという結論に導いていくのが良いでしょう。
上記の例は考察の中の論理展開ですが、序論についても同様のことが言えます。例えば、問題Aに対して解決策Bを試してみることを研究テーマとして提案するのであれば、他の解決策とも比較しながら、なぜBが良いのかを説明する必要があります。
「その他の可能性は検討されているか」「見方が偏っていないか」と自分に問いかけながら書いていくと、査読者から指摘されにくい論理展開になると思います。
先行研究を交えながら論じられているか
論理を展開していく上では、先行研究を交えることも大切です。
例えば上記の「Aという結果が生じた理由はBと考えられる」という論理展開の場合、そう考える根拠が先行研究とともに詳しく説明されていると、査読者はその展開に納得しやすくなります。逆に、先行研究を入れずに自分の推測だけで根拠を説明しようとすると、説得力に欠けるものになってしまうでしょう。
また、自分の研究結果や主張に合う先行研究だけでなく、逆の結果や見方を示している先行研究を取り上げることも大切です。自分の論理展開に合った先行研究を中心に取り上げたくなる気持ちは分かりますが、「自分の主張に合った先行研究だけを集めてきて、話を作っているだけ」と査読者に思われないようにする必要があるわけです。異なる結果や見方を示している先行研究にも言及し、自分の研究との相違について論じることで、そういった査読者の懸念を少しでも減らせるようにしましょう。
まとめ
論文の査読ポイントとして、今回は「論理性」についてまとめてみました。
- データの解釈は妥当か
- 論理の展開は妥当か
- 先行研究を交えながら論じられているか
これらは主に、論文の「考察」と「序論」に関する査読ポイントと言えます。論文を書くのが苦手な人にとっては「考察」や「序論」は比較的書きにくい項目だと思いますが、上記のポイントを意識すると書くことが増え、議論も深まっていくと思います。「その他の可能性は検討されているか」「見方が偏っていないか」と意識しながら、原稿を書き進めてみてください。
次回は「新規性・重要性・倫理性」についてまとめてみたいと思います。
<参考文献>
水島(2026)『科学を育む査読の技法』、羊土社

この記事を書いた人
田中泰章
Yasuaki Tanaka
プロフィール
自然の仕組みや環境問題、社会・教育制度などについて広い視点から考える自然科学者。2008年に東京大学大学院で博士号(環境学)を取得した後、東京大学、琉球大学、米国オハイオ州立大学、ブルネイ大学など、国内外の大学で研究と教育に約15年間携わってきました。これまでに40本以上の論文を出版し、国際的な科学雑誌の査読者として多数の論文審査も行っています。大学教員としては、これまでに40名以上の学生(学部・修士・博士)を研究指導し、若手研究者を育成してきました。専門は「人間と自然とのかかわり」で、人間活動が自然界に与える影響を生物学・化学・社会学などの複合的な視点から研究しています。
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