論文の査読ポイントを研究者が分かりやすく解説:①正当性

今回から3回にわたって、論文の主な査読ポイントについて解説していきたいと思います。査読する側にとっても査読される側(論文の著者)にとっても参考になると思いますし、特にこれから論文を執筆・投稿しようと考えている方は、掲載の可否に関わる重要なことですので参考にしてみてください。

記事としては、査読者側ではなく、著者側の立場から書いていきます。今回は研究の「正当性」に関する主な査読ポイントを3つにまとめてみました。

研究方法は分かりやすく説明されているか

研究が適切に行われたことをアピールするためには、まず、研究方法が分かりやすく書けている必要があります。研究方法が分かりにくいと、査読者はその研究がどのように行われたのかを正確に理解できず、結果や考察の内容も評価することができないからです。

「研究方法」を分かりやすく書くには、(1)基本的には時系列で書く、(2)必要に応じて図示する(フローチャートや模式図、写真など)、(3)先行研究をうまく引用する、などが効果的です。

大切なのは、自分以外の誰か(他の研究者)がその研究方法を読んだときに、内容や手順を理解して、同じ調査や実験をできるかどうかです。特に実験系の研究では、研究の再現性が重要視されます。再現性とは、他の誰かが同じ実験を行っても、同じ結果が得られるかどうかということです。研究方法が詳しく記述されていないと、他者が同じ実験をすることができないため、当然ながら同じ結果も得られません。後で誰かが同じ実験をしても同じ結果が得られるように、その方法を詳しく説明する必要があるのです。

実験系の研究に比べると、自然現象や人間の行動を調べるような観察系の研究では、再現性はそれほど重要視されないかもしれません。自然現象や生物の行動などはその場限りのものであり、「様々な条件が重なった結果、たまたまそうなった」ということもあるからです。しかし、たとえ観察系の研究でも、再現性を意識した研究方法の記述は大切です。似たような条件が重なれば、また同じような現象・状況が起こるかもしれず、それが読者にとっては有益な情報になるからです。

他者が同じ調査や実験を再現できるかどうか、読者目線に立って何度も読み返してみましょう。

研究デザインは適切か

次に、研究デザインの正当性です。研究の目的を達成したり結論を導いたりするためには、それに合った調査や実験のデザインが必要で、それが適切かどうか審査されます。

研究デザインが問題となる簡単な例を挙げると、ある介入の効果を検証することを目的としながら対照群(コントロール)がなかったり(あるいは適切な対照群になっていない)、母集団の傾向を捉えることを目的としながらサンプルサイズが小さすぎたりするような場合です。

研究デザインは論文を書く段階で変更できるものではありませんので、調査や実験を始める前に、綿密に計画を立てておくことが大切です。

データの加工方法・分析方法は適切か

得られたデータをどのように扱ったのかという点も審査されます。自分に都合のいいデータだけを使用したり、画像を不適切に加工したりすることは、研究の正当性から大きく外れる行為ですので、くれぐれも気を付けましょう。

簡単な例を挙げると、例えば同じ実験を10回繰り返し、そのうちの1回で自分の期待通りの結果が得られたとします。この場合、期待通りの結果が得られたからといって、その1回だけに注目し、残りの9回の実験を無視するということはできません。本当であればその結果が得られる確率は10%しかないのに、成功した1回だけを取り上げると成功率100%のように見えてしまうからです。ここまで極端ではなくても、どのデータを見せてどのデータを見せないかは、研究倫理に抵触する可能性がある重要な問題です。判断に迷ったときは、ベテランのアドバイザーに相談しましょう。

ただし、このようなデータの取捨選択を査読者が見抜くのは実際には難しく、査読者としてはあくまで論文に書かれていることを表面的に判断することになります。

そういう意味では、データの分析方法のほうが大きな査読ポイントになることが多いです。特に量的なデータを扱う場合は統計解析がほぼ必須になってきますので、統計解析の種類や手順が適切かどうかチェックされます。基本的なところで言えば、多重比較の際に有意水準が補正されていないとか、順序尺度なのに回帰分析を行っているとか、分散分析の前提条件がチェックされていない、などでしょうか。

まとめ

論文の査読ポイントとして、今回は「正当性」についてまとめてみました。

  • 研究方法は分かりやすく説明されているか
  • 研究デザインは適切か
  • データの加工方法・分析方法は適切か

いずれも論文の「研究方法」に関する査読ポイントです。論文の中で「研究方法」は最も書きやすい項目だと思いますが(過去に行ったことを淡々と記述していくだけなので)、査読者にとってはかなり重要な項目ということです。査読者にとっては、研究方法が分からなければ、結果や考察を正確に理解することもできません。論文を投稿するときは、その論文を初めて読む人の立場になって、研究方法が分かりやすく書けているかどうかを確認してみましょう。

次回は「論理性」についてまとめてみたいと思います。

<参考文献>
水島(2026)『科学を育む査読の技法』、羊土社

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この記事を書いた人

田中泰章

Yasuaki Tanaka

プロフィール

自然の仕組みや環境問題、社会・教育制度などについて広い視点から考える自然科学者。2008年に東京大学大学院で博士号(環境学)を取得した後、東京大学、琉球大学、米国オハイオ州立大学、ブルネイ大学など、国内外の大学で研究と教育に約15年間携わってきました。これまでに40本以上の論文を出版し、国際的な科学雑誌の査読者として多数の論文審査も行っています。大学教員としては、これまでに40名以上の学生(学部・修士・博士)を研究指導し、若手研究者を育成してきました。専門は「人間と自然とのかかわり」で、人間活動が自然界に与える影響を生物学・化学・社会学などの複合的な視点から研究しています。